2023年8月全国の繊維倒産集計

少額倒産が大半を占め、件数は前月比微減、負債額は微増

  • 発生件=23件
  • 負債額=34億400万円

2023年(令和5年)8月の全国繊維業者の倒産(負債額1000万円以上=整理・内整理含む)は23件で、前月比3件(11.5%)減少、前年同月比では1件(4.2%)減少した。

負債総額は34億400万円で、前月比では1700万円(0.5%)増加、前年同月比では61億4600万円(64.4%)減少した。前年同月と比べ大幅減となったのは、前年は三崎商事(株)(大阪府箕面市、負債額46億6300万円)ほか負債額5億円以上の倒産が3件発生して、2022年の単月では負債額が最も多かったため。

負債額10億円以上の倒産は(株)クレール(神奈川県茅ケ崎市、婦人カジュアルウエア製造、負債額10億2000万円)1件。5億円以上は0件、3億円以上も(株)ヒロセ(岐阜県大垣市、婦人服縫製、負債額4億円)、(株)モンエクセレ(新潟県長岡市、婦人服縫製、負債額3億5000万円)ほか4件。当月も負債額1億円以下の倒産が17件(74%)で小規模倒産主体の傾向に変わりはなかった。

(株)クレールは婦人カジュアルウエアを扱い、自社ブランド「NANEA」を展開して専門店に販路を築き、他社のOEMも手がけて2013/2期には年商17億2700万円を計上していた。しかし、2010/2期と2011/2期は連続で多額の赤字決算となり、財務は債務超過に転落した。2015年頃からは取引先への支払いが滞り、信用不安が表面化。近年は年商3億円に落ち込んでいたところ、債権者から第三者破産を申し立てられた。

(株)モンエクセレは高級品主体に婦人服を扱い、アパレルメーカーに営業基盤を築き、1993/4期には年商9億3000万円を計上していた。その後は赤字決算を散発する厳しい経営となり、コロナの影響で業況がさらに悪化。雇調金などを受給しながら経営再編に取り組んでいたが、今年7月24日新潟労働局が同助成金を不正に受給したとして、2億8341万円の返還を求められるも返還の目途が立たなくなった。

繊維業界は、これまでも規模の大小を問わず、コロナ前から経営不振に陥っていた企業の倒産が大半を占めていた。一方では、小規模業者を中心に各種コロナ融資や助成金の恩恵により倒産を回避してきた一面があるが、コロナ融資の返済が本格化する中、さらなる返済猶予を受けている企業もあると伝えられ、「倒産の先送り」が継続されている可能性も否定できない。また、㈱モンエクセレのように「雇調金の不正受給」問題も散見され、今後も予断を許さない状況が続きそうだ。

業種別では「小売商」8件、「紳士・婦人・子供服・被服製造卸」7件、「ニット製品・洋品雑貨製造卸」3件、「織物製造」「その他」各2件、「染色整理・特殊加工」1件。

原因別では「業績ジリ貧」21件で91%を占め、「資金力薄弱」2件。

2023年8月東海・中部の繊維倒産集計

件数は東海4県下、中部9県下とも低水準の推移

東海
  • 東海4県(愛知・岐阜・三重・静岡)
  • 発生件数=3件
  • 負債額=4億5000万円

東海4県下の倒産は3件(前月の発生はなかった)、前年同月比では2件増加した。負債額は4億5000万円で、前年同月比では2億5000万円(125.0%)増となった。 業種別では「紳士・婦人・子供服・被服製造卸」2件、「小売商」1件。原因別では3件すべてが「業績ジリ貧」となっている。

創作きものひかり(三重県いなべ市)は、振袖、留袖、訪問着、帯地等フォーマル商材を主体に紬などの産地織物、和装小物、宝飾品も扱い、本店と県内ホテルの分店で販売。店頭小売と定期的に催事販売を行っていたが、コロナ禍で時短営業や休業など営業の制約を強いられ、その後も低空飛行が続き、資金繰りも限界に達したもの。


中部
  • 中部9県(愛知・岐阜・三重・静岡・長野・富山・石川・福井・滋賀)
  • 発生件数=4件
  • 負債額=4億8600万円

中部9県下の倒産件数は4件で(前月の発生はなかった)、前年同月比では2件増加した。負債額は4億8600万円で、前年同月比では3600万円(8.0%)増となった。

業種別では「紳士・婦人・子供服・被服製造卸」2件、「小売商」「その他」各1件。原因別では4件すべてが「業績ジリ貧」となっている。

東海4県下以外の倒産では富山で1件発生した。

中村テント(富山市、負債3557万円)は、テント、帆布、シート類などを扱い、運送会社、自動車ディーラー、建設会社など県内一円に販路を形成。かつては売上高3億円以上を上げたが、需要の漸減、従業員や経営陣の高齢化による営業力低下で、近年は数千万円にまで減少。採算維持も難しくなり、事業継続を断念した。