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けっぱれ No.928

コロナ禍での巣ごもりによる運動不足解消にと、「ラジオ体操」をする人が増えている。そのなかで、「ご当地ラジオ体操」が再び脚光を浴びているという。

津軽弁や大阪弁など、地元の方言を使って“号令”をかける「ご当地ラジオ体操」が話題となったのは10年ほど前のこと。そもそもは、ラジオ体操と地元言葉を組み合わせることで、県民に地元の文化を再確認してもらうとともに、地元のPRをしようというもの。かなり前だが、筆者も実際に青森のご当地体操を体験したことがある。地元の伝統楽器である津軽三味線が伴奏に加わり、最後は「けっぱれー」で締めくくる楽しい体操だった。ちなみに「けっぱる」とは「頑張る」の津軽言葉である。

三味線といえば、7月に最大手メーカーの「東京和楽器」(八王子市)が8月で廃業するとのニュースが流れた。前身の会社を経て創業135年、邦楽界を支えてきた老舗の幕引きに業界では激震が走った。三味線は歌舞伎や文楽などに欠かせない邦楽器として知られるが、全国邦楽器組合連合会の調べによると、三味線の国内製造数は、1970年には14500挺(丁)あったのが、2017年には10分の1以下の1200挺にまで低下。同社でも10年以上前までは年間800挺ほど製造してきたが、最近は400~500挺にまで減少していた。コロナ禍も大きく響いた。舞台公演や演奏会などは相次いで中止、延期となり、修理や新調などの需要はパッタリ止まった。後継者の問題もあって廃業の意思を固めた同社の大滝社長は「見通しが立たず、私も若くない」と苦しい胸の内を語っていた。

しかし、同社の廃業のニュースに「伝統芸能の灯を消してはならない」という存続を願う声が多く寄せられ、和洋折衷のロックバンド「和楽器バンド」が支援に乗り出した。「伝統文化を支えるため、危機的状況の打破に少しでも貢献したい」と、ライブ収益の一部を寄付するなどのプロジェクトを行ったのである。同バンドの働きかけもあって同社および三味線への注目度が高まり、追加注文などが相次いだことから、同社は8月までの営業予定をとりあえず今秋まで伸ばすことにしたという。

「自粛生活で三味線をやりたいという人も出てきた」と話す関係者もいる。「引き継いでくれる人が名乗り出てくれれば大歓迎」と大滝社長は事業の存続に望みをつなぐ。16世紀から続く伝統文化を守るためにも、なんとか継続への道が見つかるよう「けっぱれ、けっぱれ!」とエールを送りたい。