コラム


  ノーサイド   No.501
 1月8日に高校ラグビー大会決勝戦、翌9日に大学ラグビー選手権決勝戦、22日もしくは23日にクラブラグビー大会決勝戦。そして2月28日、トップリーグからの7チームに大学ラグビー優勝・準優勝チーム、クラブラグビー優勝チームが加わった計10チームが戦う日本ラグビー選手権の決勝戦が行われ、今季の「ラグビー日本一」が決まる。まさにラグビーシーズン真っ只中だ。

 ラグビーの魅力は、第一に、体を鍛え上げた男たちが、行方定まらぬ楕円のボールを必死に追い、真っ向からぶつかって奪い合い、猛然とタックルして敵の進撃を食い止めるゲーム自体の荒々しさ、猛々しさにある。第二は、ボールを敵陣地にトライする者のために全員が自己犠牲の動きを惜しまない「ALL FOR ONE.ONE FOR ALL」(皆は一人のため、一人は皆のため)の美学。そして第三は、ついさっきまでエキサイトして戦ってきた両チームが、試合終了を告げる「ノーサイド」の笛が鳴った瞬間、敵味方の区別なく互いの健闘を讃え合う「潔さ」にあるのではなかろうか。

 とりわけ「ノーサイド精神」は、紳士の国イングランドで生まれたことを象徴するラグビー独得のスポーツマンシップとして広く知られる。ラグビー球技場には普通シャワールームが1つしかないのは、両チームの選手が試合後一緒に使うことによって、試合の勝ち負けを超えて友情を深めるため、と聞いたことがある。ところが……。

 現在では、「ノーサイド」という言い方をするのは、どうやら日本ぐらいらしい。本場イギリスやニュージーランドでは「フルタイム」とか「タイムアップ」「ゲームオーバー」などと呼び、「ノーサイド」はすでに死語になっているのだそうだ。

 理由は、ここ十数年間に世界で急速に進んだラグビーの「商業(プロ)化」にある。日本でも2003年にトップリーグが導入され、プロ化に進んだが、そうしたプロ選手は勝つことやトライ数が報酬に反映されるため、「勝っても負けてもノーサイド」という考え方には、なれなくなってきたらしい。だからかどうか、シャワールームも、現在は両チーム選手の控え室にそれぞれ設置される球技場が増え、日本のラグビーの聖地・秩父宮ラグビー場も、昨年5月の工事でそのように改修された。

 そう言えば、昨年の民主党代表選の直後、小沢一郎と争った菅首相が口にした言葉は「ノーサイド精神による党内挙党体制」だった。「時代」が、悲しいぐらいに変わってゆく。

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