コラム


  「フリーライダー」   No.473
 過日のニュースを聞き、呆れた。JR東海で、なんと78人もの社員がIC乗車券を不正使用し、無賃乗車を繰り返していたそうだ。バレないように乗車後、端末を操作してICデータを消していたというその姑息さ、あくどさに、ますます腹が立つ。

 実はJR東海のみならず多くの企業で最近「タダ乗り社員」いわゆる「フリーライダー」の存在が問題視されている――といっても、最近の経済学で取り上げられる「フリーライダー」は交通費をごまかすような不届き者の話ではなく、「ラクばかりしてあまり働かないのに、給料だけは一人前にもらっていく人たち」のことだ。

 「あなたの会社や職場にも、『パソコンに向かってはいるが、何の仕事をしているのかよく分からない』という社員はいないだろうか? 特に役員や管理職、そしてベテラン社員のような少し“お偉いさん”の中にこそ、そうした姿を見かけないだろうか」と指摘するのは経営コンサルタントの河合太介氏。

 「フリーライダー」が、昔の企業にはいなかったわけではない。むしろ、人が集団を形作れば必ず、優秀な人が2割、普通の人が6割、あまり役に立たない人たちが2割の構成になる「2・6・2の法則」は広く知られるところだ。その後者の2割の「フリーライダー」を、景気がよかった時代はまだ見て見ぬフリすることもできた。しかし不景気が定着し企業体力が弱り切ってしまった現在、彼ら「フリーライダー」を大目に見る余裕はもう、経営的にはもちろん、職場で共に働く仲間の気持ちの中にも、ない。

 そうした「フリーライダー」の存在が「負の連鎖を生みかねない」と河合氏は警告する。「フリーライダーのタダ乗り状況に気づかず注意しない上司や会社に対して、部下は『なぜ対処しないのか』と不信を抱き、信頼感を失う。こうして上司や会社から気持ちが離れた社員の間には、自分のことだけに集中しようと硬い殻に閉じこもる『タコツボ化』現象が生まれ、社内に『負の連鎖』が広まるのだ」と。

 ただし――。成蹊大学・小林盾准教授(現代社会学)らがまとめた論文「社会階層と職場のフリーライダー問題」には、一見意外に思える調査結果も載っていた。それは、「正規雇用労働者より非正規雇用労働者のほうが手抜きをせず、フリーライダーになりにくい」「賃金体系が年功序列型の人に比べ、成果主義型の人ほど、フリーライダーになりやすい」。 自社内の制度を、人を、じっくり見直す必要がありはしないか。

コラムバックナンバー

What's New
トップ
会社概要
営業商品案内
コラム
大型倒産
繊維倒産集計