コラム

 土下座と万歳  No.433
 先の衆院選で、全国にいくつかあった注目選挙区の1つは静岡7区だった。前回選挙で郵政民営化に反対して自民党を離党、無所属で戦って破れた地元・城内)実氏と、彼への「刺客」として送り込まれて当選した小泉チルドレン・片山さつき氏の因縁の再対決――結果はご存知の通り、城内氏がダブルスコアの得票差で雪辱を果たした。

 選挙期間中、片山陣営の集会の動員数は、他候補を圧倒するほど多かったという。だから「逆風を感じたことはなかった。それなのに…」と選挙後にこぼした片山氏。各所の集会では何度か「土下座」して見せた片山氏だったが、有権者はそんな彼女の姿を「パフォーマンス」としてクールに眺めていたということなのだろう。

 片山氏に限らず候補者自身や身内が「土下座」して支持を乞う場面を、今回の選挙でも何度かテレビで見た。しかし、明治・大正時代の右翼の論客・頭山満は言った。「土下座は本来、人のためにするもの。自分のためにするものではない」 善し悪しは別にして「土下座」の意味さえ、最近の日本では歪んでしまったのだろうか。

 最近変わってきたと思う姿のもうひとつに「万歳三唱」がある。「バンザーイ、バンザーイ、バンザーイ」と喜色満面で万歳を三唱する当選者や支援者の姿を、今回もニュースでずいぶん多く見た。ただ、見ながら気が付いた、その格好が少し「おかしい」ことに。「バンザーイ」と頭上に上げた両の手のひらを、身体の内側ではなく前方に向けている人が、ざっと見た感じで7割かそれ以上に多かった。諸兄はいかがだろう。

 明治22年(1889年)の帝国憲法発布記念式典で採用されたのが最初とされる日本の「万歳三唱の正しい仕方」をご存知だろうか。「気を付け」の姿勢から、手のひらを内側にしたまま腕を上げるのが正式。このことは明治12年4月1日公布の太政官布告、通称「万歳三唱令」とその「細部実施要領」に細かく定められている――と書いたが、「このことは…」以降部分は、10年ほど前「偽太政官布告?」と話題になった、誰かがエイプリルフールで流したらしいインチキ話で、そんな太政官布告は存在しない。

 しかし、「手のひらを内側に」が「正しい万歳」の仕方であるのは事実で、最近見かける手のひらを前に見せたバンザイは「お手上げ」「降参」のバンザイなのだ。

 経済界で「バンザイ」といえば「倒産」を意味する。308人分の「万歳三唱」を繰り返した民主党政権には、1社の「バンザイ」も生み出さない経済政策を、切に望みたい。

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