コラム


 機敏な対応  No.424
 セブン−イレブン・ジャパンの、対応の機敏さには驚いた。一部の加盟店が賞味期限が近づいた弁当などを値引き販売しているのを本部が不当に制限したとして公正取引委員会から排除措置命令を受けた問題で、同社は23日、そうした商品廃棄に伴う損失について、現在は「加盟店の全額負担」としている現行制度を見直し、「廃棄商品の原価の15%を本部が負担する」仕組みに変更、7月1日から実施すると発表した。

 排除命令を受けた22日の会見では、「商品発注の権限は加盟店が持っているのだから、(商品廃棄に伴う)損失も加盟店が負担すべき」(井坂隆一社長)と既定方針を繰り返し主張していた。それを一夜で大転換した理由は、加盟店を擁護する内容の今回の公取委命令がマスコミに大きく取り上げられたことによって、加盟店の中に値引き販売に追随したり商品発注を手控える動きがさらに広がることを、先手を打って防ぐ必要があったからだ。消費不振の厳しさを日々敏感にとらえているからこそ、事ほどさように素早い対応を不可欠と感じるコンビニ業界の、強い危機意識の表れといえよう。

 コンビニ業界には「コンビニ会計」と呼ばれる独得の仕組みがある。本部と加盟店が分配する「売上総利益」は、一般の企業会計では「売上高−売上原価」を指すが、コンビニ業界では「売上高−(売上原価−廃棄ロスや棚卸ロスの原価)」で計算される。「廃棄ロス」は賞味期限切れによる売れ残り、「棚卸ロス」は万引きなどによるロスのこと。その全額が加盟店の負担だ。このため負担をできるだけ軽くしたい加盟店は、賞味期限のある食品を、手をこまねいたまま廃棄するのではなく、一定の残り時間が来ると値下げ販売することによって損失を少しでも抑えようとする動きが近年出てきていた。それを、本部が圧力まがいの「待った」をかけたことで今回の問題は起きた。

 ビジネスモデルの根幹を「常に新鮮で同質の商品を24時間体制で消費者に届ける利便性(コンビニエンス)」に置くコンビニでは、それゆえ「定価販売」は何としても守りたいポリシー。加盟店が単独で見切り販売、値下げ販売に走る動きを、何としても抑えたい思いが本部にはある。今回のセブン−イレブンによる「損失補てん」の方針は、そんな背景に急かされての妥協だろうし、同様の動きが業界に今後広まるのではないか。

 何度も言うが、対応の機敏さに驚く。そう、民間企業が生きていくには、これほどのスピード感が必要なのだ。ひるがえって、政官界に棲む人々の、なんと愚鈍なことか。

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