コラム


 定 礎  No.423
 普段よく見かけるのに、その意味・起源を案外知らない物の1つに、ビルの出入口近くに埋め込まれている「定礎」がある。ビルの竣工年月を示した、単なる記念プレートだろうぐらいに思って見過ごしているが、起源は5000年前の、石造建築が活発化したメソポタミア文明に遡る。本来は建築に取りかかる最初に、基準点としてまず設置した「定礎石」にそのルーツはあるのだそうだ。

 やがて西洋では、定礎石を据えた際、その奥に鉛や石など腐食しにくい素材で造った「定礎箱」を埋め込むようになり、中に、工事を始めた年月日や施主や工事者を記した板や設計図、当時の新聞や硬貨、そして聖書などが納められるようになった。

 いつごろからかは不明だがその後、「定礎」を埋める時期は建築初期ではなく外装工事が始まる段階までずらされたうえ、設置場所も、昔は基本的に東南角と決まっていたのが出入口付近の目立つ場所に移動。書かれる日付も建築開始日から竣工予定日に変えられるとともに、中に納められる物も、明治末期にこの慣習が導入された日本では神社札や、会社の社史などが納められるなど、「定礎」は元来の神事から「タイムカプセル」的性格に変わっていった。

 「定礎」の設置は建築基準法などで義務付けられているわけではない。このため最近は「定礎箱」を埋め込むのはやめてプレートだけにするビルも少なくないそうだ。代わって近ごろは個人の戸建て住宅に、自筆の「定礎」や、家の図面や家族の写真、一人一人の手形を押したプレートを入れた「定礎箱」を埋め込む人も増えているという。

 そんなふうに時代とともに変化してきた「定礎」だが、ところで――。

 麻生首相「アニメの殿堂は私の思いつきで出た話ではない。安倍内閣当時に話が出、福田内閣で企画し、私がそれを実行させていただいたという経緯なのだから」

 鳩山代表「補正予算は本来、本予算が終わったあと、緊急に必要になって組まれる予算でなければならないのに、安倍内閣時から考えられていたものが突然、補正予算に組まれるのは、どう考えてもおかしいではないか」 17日に行われた2回目の党首討論。少なくともこの件に関する限り、論理的に見て軍配は鳩山さんに上がろう。

 総工費117億円を投じた立派な「国立アニメの殿堂」が完成した暁に、その「定礎箱」にはさて、国民のどんな「思い」が一緒に納められることになるのだろうか。

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