これも1つの「時代」の反映かと、感慨深く受け止めた諸兄もいらしたのではあるまいか。交詢社出版局刊行の「日本紳士録」が、先月末に発行された第80版をもって休刊――というより事実上廃刊されることになったとのニュースを聞いて。 交詢社。福沢諭吉が呼び掛け、明治13年に日本で最初に設立された社交クラブである。その会員名簿等を元に同22年「日本紳士録」の初版は発行された。 初版の掲載は約2万3000人。だが掲載基準を、高額納税者のほか「人格、識見ともに日本人の代表足りうる人」と定めたことが「紳士の条件」と受け止められ、名誉心をくすぐられる者が少なくなかったのか、掲載希望者が殺到し、第2版では一挙に3万3000人。昭和46年編集出版が、交詢社から独立した交詢社出版局に代わってからも掲載者数は増え続け、平成12年ごろには14万人に達したそうだ。しかし――。 その後、類似の出版物が多く出回ったうえ、「紳士録」のイメージを決定的に悪くする重大事件が発生した。紳士録を材料に多額の掲載・削除料を要求する、いわゆる「紳士録商法」の被害が相次ぎ、大きな社会問題になったからだ。警視庁が2年前に摘発した事件では、なんと14億円を脅し取られた元会社員もいたというから驚く。 そうした悪質事件の発生に加え、近年は個人情報の取り扱いへの警戒心が高まったことや、ある程度の個人情報ならネットで容易に検索できるようになったことなどの「逆風」に晒され、最新版の掲載者数は10万人を下回るまで減った。「残念ながら、紳士録はその社会的使命を終えた」(交詢社出版局)とは、正しい判断だったろう。 ただ、それはそれとして、思う。いま社会から姿を消しつつあるのは、「紳士」そのものではないのかと。【紳士】とは「性行正しく礼儀に厚く学徳ある人。品格があって礼儀に厚い人」と「広辞苑」にある。はて最近、そんな「紳士」にお目に掛かったことが、おありか? 不祥事を起こし、「申し訳ありませんでした」とマスコミの前で謝る「一見紳士風」大人の、情けない姿はほとんど毎日のように見るけれど。 「本当のプライドを持つ=何が恥ずかしいことなのかを知る」「金を支配しても、金に支配されない=金では交換できないものがあることを知る」――日本社会心理学会長・島田一男氏は、著書「日本人の品性」で挙げた「紳士の条件」7つの中に加えた。 「紳士」が居なくなり「金の亡者」ばかり目立つような日本は、美しいのか? |
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