コラム


老舗イカリソースの破綻 No.215
 弊紙本支社のいくつかにプチ調査してみた。「ソースは、何を使っている?」と。

 札幌「ブルドックですね。カゴメや、地元にはチキンソースもあるけど」

 仙台「ブルドック。ただ、転勤族の多い土地柄のせいか、おたふくも頑張ってますよ」

 富山「カゴメかブルドック。うん、イカリソースも見かけるねえ」

 福岡「カゴメかイカリ。ブルドックも最近多いみたいだけど」

 ちなみに京都は「さあ、何でしょうねえ。ソースはあまり気にしてませんから。っていうか、京料理にソースは馴染みませんねん」だそうだ。しゃらくさい。

 イカリソースが会社更生法を申請した。産業廃棄物処理設備の性能を偽ってリース会社2社から8億円近くを騙し取った詐欺事件で、前代表者ら経営陣が逮捕され、その影響から関西の百貨店、スーパーがイカリ製品を店頭から撤去するなど信用が急速に低下。今後の資金繰りが不透明になり、自主的な事業継続が困難になったためだ。負債50億円。今後はライバルのブルドックソースから資金・人材両面での支援を受け、その傘下で再建を目指すという。

 明治29年食品卸「山城屋」として創業。業歴の古さもさることながら、国産ウースターソースを初めて作り出したパイオニアとして知られ、関西圏では十人中八、九人に「ソースと言えば、イカリでしょ」と言わせるほどの強い支持を得てきた。

 にもかかわらず、その老舗企業が躓いたのは、平成5年先代が急逝し、前社長が4代目として34歳の若さで経営を引き継いでから。「他社で修業した経験がなく、仕事に対する厳しさや、社会常識すら欠いていたボンボンには、社長の座は、あまりにも荷が重すぎた」というのが社内外の一致した声だ。

 しかも社長就任と前後してバブル期の不動産投資の失敗が発覚。その処理を持て余して困惑する彼の周囲に、得体の知れない知人・縁者が一人また一人と集まり始め、やがて会社の中にまで入り込んで、名門企業をいわば「裏社会」の蟻地獄に引き摺り込んで行った様子が、ここ数日のマスコミ報道からはうかがえる。

 特異なケースではある。けれども、企業というものが、あくまで人に率いられ、人の集まりと関係の中で生き続けるものである限り、実は特異なケースとも言い切れないかも知れない恐さと教訓を、この老舗企業の破綻は教えている気がする。

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