コラム


 「初心忘るべからず」 No.208
 「目の前だけを見る<虫の目>だけでなく、大局を俯瞰する<鳥の目>、変化を早く察知する<魚の目>を併せ持たなければならない」(ユニ・チャーム・高原豪久社長)

 「経営環境が急激に変化する時代。ポジションと打順を決めた<野球型>ではなく、現場で臨機応変に行動する<サッカー型>のチームワークで戦うことを常に念頭に置くことが大事だ」(ブラザー工業・平田誠一社長)
「会社が人生を丸抱えする時代ではない。会社のビジョンに自らの<志>を重ね合わせ、自己実現を果たしてほしい」(三井不動産・岩沙弘道社長)

 過日行われた大手企業の入社式。業績が緩やかな回復の兆しを見せる中、各社トップの訓示は、「攻めの経営」に転じる意気込みをアピールする内容が多かった。

 「初心忘るべからず」も、いろいろな場で贈られたに違いない。言葉はありふれていても、新たなスタートラインに立った今この時の新鮮な感動と覚悟をいつまでも忘れてはならないという戒めは、心引き締まる思いとともに素直に胸に染み入ろう。

 作家・城山三郎氏も著書「嵐の中のいきがい」の中で書いている。「人には慣れというものがある。慣れによって救われる場合もあるが、むしろ慣れで駄目になることの方が多い」。では、行き詰まった時にどうするか。「初心こそ、その人を豊かにし、また美しく見せるものである」と。そして「努めて新しいことを学び、違う角度から物事を眺めようと努力することだ」。

 「初心忘るべからず」は室町時代の能役者・世阿弥が芸論書「花鏡」で書いた言葉だ。曰く「当流に、万能一徳の一句あり。初心忘るべからず。この句、三ヶ条の口伝あり。是非とも初心忘るべからず。時々の初心忘るべからず。老後の初心忘るべからず」

 つまり世阿弥の言う「初心」とは本来、「芸の未熟さや失敗体験」のことだ。だからフレッシュマン限定で向けられた言葉では、必ずしもない。長い人生の節目々々や、完成の域に達した老後においてさえ、自身の未熟さゆえに味わった過去の屈辱感を忘れず、常にステップアップしようとする意欲と向上心を決して失ってはならないと世阿弥は説いた。

 新緑が芽吹く季節。老いも若きも今一度、「初心忘るべからず」の言葉を噛みしめ、大きな花を咲かせたいものだ。

コラムバックナンバー

What's New
トップ
会社概要
営業商品案内
コラム
大型倒産
繊維倒産集計