「捕まえられるものなら、捕まえてごらん」とでも訳したらいいのだろうか。昨年公開されたアメリカ映画「Catch Me If You Can」は、若い詐欺師とFBI捜査官の繰り広げるコメディだ。 1960年代、まだ人が人を信じられた頃のアメリカ。レオナルド・ディカプリオ扮する16歳のフランク・アバグネイルは、両親の離婚のショックから家を飛び出し、生きるために小切手詐欺を思いつく。さらに、ある職業が無条件に人の信頼を得ることを発見する。パイロットの制服は、銀行の顧客係も夜の女も、本物のパイロットさえも欺く。偽造した小切手を出しても、簡単に多額の現金が手に入る。そのうえ、パイロットは提携する航空会社の飛行機にただで乗れる特権を知る。 偽造小切手だけで数百万ドルを稼ぐというエスカレートした犯行に、FBIが動く。トム・ハンクスが演じる捜査官カール・ハンラティは、犯人逮捕に燃える。しかし、犯人はアメリカ大陸の東へ西へ、ついにはヨーロッパへ。ハンラティは、巧妙な手口に翻弄されながら、幼い犯罪者になぜか痛ましさも覚え、保護してやりたいという奇妙な感情を抱き始める。だが、ついに――。 実は、フランク・アバグネイルは実在の人物。つまり、この話は概ね実話なのだ。彼は、驚くべき熱心さで小切手偽造技術と巧みな使い方を研究し、小切手詐欺を次々と実行していく。結果、インクの種類、紙のカットの仕方など、小切手に関するあらゆる専門知識を身につける。もちろん、それは犯罪のための知識で、最後には捕まる。 しかし、その知識が逮捕後の人生を大きく変える。まず、知識を公的機関で教え、連邦政府に協力するという条件で、刑期より早く釈放される。その後、FBIの詐欺犯罪捜査に協力し、長くFBIアカデミーの講師を務める。そして、金融詐欺に対する防犯コンサルタント業を興して大成功。世界の1万4千以上の金融機関、政府、企業を指南する。さらに、偽造されにくい小切手を開発し、何千もの金融機関で使われる。現在は、ハイテク犯罪の情報を提供する情報誌の出版を行う。世界で最も信頼される「金融犯罪の権威」なのだ。まさに映画顔負けの後日談だが、これもまた事実。 犯罪は褒められないことだが、人間は絶望の淵に沈みかけても、懸命な努力をすれば、どんな世界でも一角の人物になれるものなのだ。そこで、わが身を省みると……。 |
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