コラム


 「捨てる」ということ  No.552
 ▽売り上げの8割は全商品の2割に依存している ▽売り上げの8割は全社員の2割が支えている ▽全所得の8割は2割の富裕層が持つ ▽仕事の成果の8割は費やした全時間の2割で生み出されている――等々、さまざまな「8:2」の法則がある。

 諸兄の目の前にあるパソコンだって、たぶん同じはず。デスクトップに貼り付けられた「ショートカット」の8割はここ1年以内にクリックされたことがなさそうだし、「これは将来必要だろう」とメモリー内に溜め込こまれたファイルの8割も、結局はパソコンの動きを遅くするマイナス要因にしかなっていないのではあるまいか。デスクの周囲に積まれた多くの資料類も、全部がムダとは言えないにせよ、その8割を片付けることができたなら、どれほどすっきりした気分で新年を迎えられるだろうかと思う。

 とうとう1年の最終週を迎えてしまった。捨てる物、残す物の取捨選択をはっきりする時期。「もったいない」精神が根強い日本人は、言い換えれば物を捨てることが苦手な民族である。そのために不要な物まで溜め込み過ぎ、後で苦労する。そこで「片付けコンサルタント」近藤麻理恵さんは、物を捨てるか否かの判断基準を、「その物が本当に心にときめくか否か」という価値観に置いた点が新鮮で分かり易いと共感を呼び、著書「人生がときめく片づけの魔法」はいまや100万部超のベストセラーになっている。

 「捨てるという行為には、頭の中を整理し脳をリセットする効果がある」と脳科学者は指摘する。「物を捨てるということは、それに付随する過去の記憶を軽くすることでもある。不要な記憶が溜まり過ぎると、『過去の記憶を捨てる』→『新たな情報を入手する』という流れが滞る」と東邦大学医学部・有田秀穂教授。

 イライラしているか、気分が落ち込んでいるかによって、掃除の仕方も変えたほうがよく、イライラしている人は最初に「捨てる」作業から始めたほうがいいらしい。「イライラ状態のときは、複数の事象が頭に浮かびやすい。物の要・不要を判断しながら身の回りを整理すると、分散した思考がまとまる」(諏訪東京理科大学・篠原菊紀教授)からだ(=いずれも2009年5月2日「日経PLUS1」)。

 本紙は本号が今年の納刊。「捨てる」ことが苦手な筆者も、パソコンにデフラグ処理をかけて“掃除”しながら、デスク周りを整理しようと思う。本年のご愛読に深く感謝するとともに、各位の来年のご多幸を心から祈念申し上げたい。どうか、良いお年を。 

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