コラム


 責任転嫁  No.541
 プロ野球セ・リーグでは中日ドラゴンズが昨年に続き優勝し、球団初のリーグ連覇を果たした。おめでとう!――と14日付け発行の本紙が月曜日朝、諸兄の目に触れた時には、すでにそういう結果になっているかも知れない。

 もしそうならば、ドラゴンズは2004年からの8年間では連続Aクラス、リーグ優勝が今回を含め4回。07年には日本シリーズで北海道日本ハムを破り、53年ぶりの「日本一」にも輝いた。すべて、04年に就任した落合博満監督の下でだ。にもかかわらず、その落合監督を、契約通りとはいえ今季限りで事実上解任するという球団発表には驚いた。オジサン世代でも思わず「マジで?」と口走った、ファンにとっては「暴挙」だ。しかもその発表日が、連勝すれば逆転優勝の可能性が出てくるヤクルト4連戦初日の先月22日。チームに動揺を与える最悪のタイミングを、球団がわざわざ選んだことにも驚く。

 「(落合氏が)野球殿堂入りしたのも節目…」「新しい風を入れるため」と球団代表は記者会見で理由を話した。しかしその結果の後任が、16年前に中日監督を退き、やはり野球殿堂入りしている、落合監督より13歳も年長の高木守道氏では、合点し難い。というより、本当の理由が他にあるだろうことを多くのファンは察している。

 2009年に1試合当たり3万2000人だった観客数が、今年は2万9000人ペース。地元企業に依存してきた「年間シート」も、不況―経費節減の煽りで買ってもらえなくなった。球団の赤字を補填してきた親会社・中日新聞の経営も、インターネットに押されて購読部数や広告収入が減り、楽ではない。一方で、チームの選手や監督、コーチの年俸は好成績を背景に上がり続けている。だから、1億5000万円、一説では3億円以上ともいわれる落合監督の高額な年俸をまず削りたい ―― そんな球団の本音が見え見えだ。

 しかし、ファンはみんな怒っている。「チームの好成績を収益に結び付けられないのは、球団にそれを生かす営業力やアイディアがないからだ」「球団首脳の経営能力不足を現場に押し付けるなんて、責任転嫁も甚だしい」などといった厳しい非難が、中日新聞を除く新聞の投書欄やネット掲示板では飛び交っている。

 不自然・不可解・理不尽な人事ほど、人をシラけさせ、失望させるものはない。それは趣味の野球チームの話だろうと、総理大臣を含む国政レベルの話だろうと同じこと。まして私たちが身を置く職場ではなおさらだとも、本紙の性格上、付け加えておこう。 

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