コラム


 資 質  No.534
 「『B級グルメ』っていう声もあるんだよなあ」と、政権与党・民主党の、しかも代表代行である仙石由人氏が、内輪の席とはいえ口にしていたと聞くと、落胆する。たしかに、29日実施がほぼ確実とされる民主党代表選の、野田財務相、海江田経産相、馬淵前国土交通相、小沢元環境相、前原前外相、さらに鹿野農相、樽床衆院国家基本政策委員長という候補者の顔ぶれは人材不足感を否めず、溜め息をつきたくなるけれど。

 「徳は才の主。才は徳の奴。才ありて徳なきは、家に主なくして奴、事を用うるがごとし」(人徳は主人、才能はその使用人。才能があっても人徳がないのは、主人が居ない間に使用人が勝手に振る舞っているようなもの)と中国の思想家・洪自誠は随筆集「菜根譚」に残した。正直言っていま7人中の誰に最も、未曾有の国難を救うリーダーとしての才能と、それを上回る人徳があるのか知る手立てがないから余計不安になる。

 リーダーのあり方を説いた古典は「菜根譚」をはじめ数多いが、とりわけ「指導者のバイブル」としてよく読み継がれている一つが、江戸時代後期の儒学者・佐藤一斎が著した随想録「言志四録」だろう。「言志四録」は一斎が42歳から40年間にわたって綴った「言志録」「言志後録」「言志晩録」「言志耋録」の総称。合わせて1133条に及ぶその語録の中から、西郷隆盛は101条を「座右の命」に撰び、修養の手本にした。また近年ではあの小泉さんが首相就任後間もない2001年5月、衆議院での教育関連法案の審議の答弁で「言志四録」を引き合いに出して話題になったりもした。

 「一物の是非を見て大体の是非を問わず。一時の利害に拘りて久遠の利害を察せず。政を為すに此くの如くなれば国危うし」(一部を見て全体を見ず、一時の利害で将来を考えないような政治では、国家は危機に陥る=「言四録」180条) あるいは「我が言語は吾が耳自ら聴くべし。我が挙動は吾が目自ら視るべし。視聴既に心に愧じざれば即ち人も亦必ず服せん」(自分の言葉は自分で聴き、自分の言動は自分で視てみる。それで自分の心に愧じることがないなら、人は必ず従ってくれるものだ=「言志晩録」169条)等々、次期首相を志す人たちにぜひ肝に銘じてほしいと、国を託す私たちは思う。

 以後は余談。タレント・島田紳助の突然の引退表明には驚いた。「虚像」の世界で生きてきた人だから、彼の釈明の全部をそのまま納得するわけにはいかない。ただ、潔さは認めたいし、その点は見習ってほしいと思う人が、いろんな世界に少なからずいる。

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