コラム


 デジタル化の陰に  No.530
 NTTドコモは、今秋以降に発売する携帯電話の新機種の4分の3を、従来タイプの携帯電話からスマートフォンに切り替えるそうだ。またIT関連の調査会社MM総研によると、今年3月末のスマートフォンの契約数は955万台で、携帯端末の総契約数1億912万台のまだ8.8%だが、4年後の2015年には6137万台と6.4倍に増加、シェアは50.9%に達するだろうと予測している。まさに「スマホ時代、到来!」である。

 スマートフォンの最大の魅力は、インターネットを手軽に使えることだ。従来タイプの携帯でもネットには繋がるが、動作が遅かったり操作が面倒だったりという不便さがあった。その点スマートフォンは、パソコンとほとんど変わらない手軽さでネット情報を見ることができる。機能面でも、画面サイズが携帯より大きいため見易いうえ、操作も、画面を指で触れるだけで簡単に切り替えられるなど、ずいぶん扱い易い。

 その結果、スマートフォンは電話やメールによる通信機能というより、インターネット機能を柱に情報を受発信したり、自分が欲しい商品やサービスを、探したり購入もできる簡便なツールとして、若者世代の生活に根付きつつある。その機能や情報量、また利用者の数や層が今後さらに広がれば、スマートフォンを基軸にした新しい消費市場が生まれる可能性も少なくない―― 等々、明るい展望を最近多く見聞きする。ただ――。

 あらゆる分野で急速に進む「デジタル化」だが、「本当にこれでよいのか」という複雑な思いも他方で抱く。たとえば24日から実施されたテレビの「地デジ化」だ。

 総務省は今年6月末時点の「地デジ未対応世帯」数を29万世帯と発表した。しかし、同調査でサンプルに選んだ対象は15歳以上80歳未満。そう、80歳以上の高齢者は調べてさえいないのだ。また政府は、所得が少ないことを理由にNHK受信料や市町村民税を免除している約435万世帯に対しては地デジチューナーを無料配布するなど支援を行なっているが、NHKによると6月末での同工事の完了数は約120万件だった。残りの300万世帯が24日までに対応を完了できたとは、常識的には考えられまい。

 テレビ放送の地デジ化は、テレビで使う電波帯域をアナログ時代の3分の2に狭め、空いた帯域を携帯端末用などに回すことが目的の1つだった。「デジタル化」が時代の要請であることは理解する。けれど、だからといって高齢者や低所得者など「弱者」を置き去りにし切り捨てて進む社会の先に、明るい未来があるとは思えない。

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