コラム


 ビビり体質  No.529
 早朝から深夜まで気の毒なほど「なでしこジャパン」があちこちのテレビ番組に引っ張りダコである。21日朝の某番組には、準々決勝の対ドイツ戦で決勝ゴールを決めた丸山桂里奈選手が出演、試合前に貰った母・恵子さんからのメールを紹介していた。文面は「どんどん打て。パスなんかするな!」。「そうなんですよ。いつも(シュートすればいい場面で)パスしてしまうから」と丸山さんは苦笑いしていたが。

 絶好のシュートチャンスだったのになぜ打たないんだと、観ていて地団駄を踏みたくなるほど悔しく思う場面を、男子サッカーではこれまで何度も目にしてきた。たとえば1998年男子W杯フランス大会最終予選の対イラン戦。後半から投入された野人・岡野雅行選手は、ゴール前で敵キーパーと1対1になったにもかかわらず、なんと中田にパスを出し、結局ディフェンスにクリアされて得点できなかった。「これを外したら日本に帰れない、と思った瞬間、つい…」と岡野選手が後で語っている。

 岡野選手の例を引き合いに出していたのは先週14日から始まったNHK総合の新番組「セカイでニホンGO!」の第1回「リスクを恐れるニホン人たちへ」だった。

 北海道大学の山岸俊男教授(社会心理学)によると、日本人は世界一の「ビビり体質」なのだそうだ。世界の科学者が共同で行なっている「世界価値観調査」に基づくもので、「自分は冒険やリスクを求めるタイプではないと思っている人」、つまりリスク回避型の「ビビり体質」人間の割合が、インドネシアや韓国、タイなどの20%、米英やカナダ、オランダなどの40%台に比べ、日本は70%台と48カ国中で最も高いという。

 そうした日本人の「ビビり体質」は、年功序列・終身雇用体制が長く続いたことによる「社会の仕組みに原因がある」と、山岸教授は米社会学者メアリー・C・ブリントンとの対談集「リスクに背を向ける日本人」の中で話している。日本では、集団の中で同調している限り生活を安定的に維持できる。しかし、リスクに挑戦し、けれども残念ながら失敗してしまうと、その失敗をリカバリーする社会的制度がない。つまり日本は「セカンドチャンスがほとんどない社会」だから、無意識にリスクを回避したがるのだと。

 今回「なでしこジャパン」の戦いぶりで、観ながらイライラする場面がほとんどなかったのは、彼女たちがリスクを恐れず挑戦していたからではないか。ひるがえって日本男児は、「ビビり体質」からの脱却が必要ではないのか、さまざまな分野・立場・場面で。

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