コラム


 いろんな法則  No.526
 営業マンが何度も何度も足を運ぶうちに、やがて「君の熱心さに負けたよ」と客が契約してくれた、という話がままある。自分の熱意がやっと伝わった、と営業マンは喜ぶけれど、それは誤解。また「諦めずに足を運べば熱意が通じ、注文が取れる」と部下を叱咤激励する上司がいるが、これも誤り。何度か足を運んで良い結果を得られるのは、実は最初から第一印象が良かった人だけ。逆にいえば、第一印象が悪かった人は、その後何十回訪問しても相手は嫌がるだけで、うまく行くことはほとんどない。

 心理学に「スリーセット理論」という法則がある。人間は誰かに3回も会えば、印象や評価がほとんど固定化(セット)され、3回以降は何度会っても、最初の印象を強めこそすれ、劇的に変化することはほとんどない、というものだ。しかも、1回目での第一印象は相手の外見で評価され、内面的な魅力はほとんど考慮されない。2回目の出会いでは初対面での観察を再評価するが、よほどのインパクトがない限り第一印象のイメージが崩れることはなく、3回目では、もはや判定を確認するだけにとどまる。

 おまけに、第一印象の判断を下すのにかかる時間はたった3~5秒だと、米国の心理学者アルバート・メラビンは実験結果から指摘している。しかもその第一印象を決める構成要素は1.言葉(話の内容)7% 2.声(声の大きさ、高さ、強弱、テンポ、イントネーション)38% 3.外見(表情、動作、仕草、服装、メイク)55%だとか。「人を見かけで判断してはならない」と口では言う私たちも、実際の行動は違うらしい。

 さらにさらに、こうした「スリーセット理論」で抱いた第一印象を覆し、相手に受け入れてもらえる可能性は1%未満だそうだから、ほとんど絶望的と言ってよかろう。

 ただし、心理学にはもう1つ「返報性の法則」というものもある。米国の心理学者で「影響力の武器」の著者ロバート・チャルディーニが言うもので、人間は、他人から何らかの施しを受けると、そのお返しをしなければならないという感情を、程度の差こそあれ抱くということ。たとえば「親切にされたら親切を返す」「受けた恩は返そうとする」「そっちがそう来るならこっちもこう返そう」と思う気持ちだ。

 その「返報性の法則」が「スリーセットの法則」を打ち破ることができるのか否か、浅学の筆者には分からない。けれど、わが国の政治の現状が、「返報性」どころか、与党も野党も「どっちもどっち」であることは、残念ながら、国民はよーく分かっている。

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