コラム


 「六月無礼」  No.523
 「クールビズ」といまさら言い始めなくたって、日本には源平の昔からその習慣はあったということだろうか。「平家物語」写本には「六月無礼とて紐解かせ給ひ…」との記述が残る。暑いのだから、服装の多少の乱れはお互い大目に見よう、という意味。ただし当時は陰暦だったから、現代ではもっと夏の盛りに当たるようだが。

 ともあれ今年もクールビズ――いや今年は内容が一段と強化された「スーパークールビズ」が今月から始まっている。去年までの「地球温暖化防止のための省エネ」目的に加え、今年は福島や浜岡の原発が運転を停止したことから、夏の電力需要期を乗り切るため、一層の節電対策を迫られているのはご承知の通りだ。

 環境省が提唱している新しいライフスタイルは、一、自宅もオフィスも室温28℃を基本 にする 二、サマータイム導入などで勤務時間帯を早め、残業も控える 三、オフィスでもスダレを使うなど日除け対策を採る 四、打ち水やパソコン電源をこまめに切るなど、あらゆる節電アイディアを実行する 五、職場では、かりゆしやポロシャツ、Tシャツにチノパン、ジーパンもOKにする――等々だ。しかし――。

 ファッションビジネスコンサルタントの平井義裕氏が嘆いている。「いい年をした大人が、ドレスコードがないとコーディネートを決められないなんて情けない。今回のスーパークールビズは、『日本はまだファッション後進国』と世界に発信してしまったようなものだ」(「読売新聞」5月24日)と。「生地が厚いため夏着には不向きなジーンズの着用を許すことが、なぜクールビズなのか。Tシャツだって、首のシワや、崩れてしまった体の線が目立つから、中高年は避けたほうがよいのに」とも。

 そんな環境省の「スーパークールビズ」キャンペーンを、「いつものダークスーツの代わりに薄手の服装を促すことで、真夏の『人間メルトダウン』を防ごうという取り組み」と紹介したのは米国「ウオールストリートジャーナル」紙の女性記者。「興味深いことに、環境省は女性向けのスーパークールビズスタイルに関するガイドラインは作成していない。当局の一人は、女性向けのガイドラインの作成は男性向けよりも難しいため、各個人に任せると話す」と皮肉っぽく付け加えていた。

 「人間メルトダウン」という外国紙の不愉快な揶揄も、「六月無礼」と聞き流すしかあるまい。だって、いまの日本は、政権もまた深刻な「メルトダウン状態」にあるのだから。

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