コラム


  中小企業のイライラ   No.485
 中小企業の金融支援策として2008年10月に始まった「緊急保証制度」。今年3月で期限切れを迎えたが、一部の大企業を除いて景気回復の兆しが見られないことから、改めて「景気対応緊急保証制度」に衣替えして期間を1年間延長、対象業種も従来の545業種から原則全業種に拡大。さらに利用認定基準を緩和するとともに、保証枠の規模も30兆円から36兆円に拡充されて再スタートした。

 「緊急保証制度」では、1社2億8000万円を上限として全国の保証協会が金融機関の中小企業向け融資を100%保証する。8000万円までの融資なら無担保で保証を受けられ、企業が返済不能に陥った場合は協会が債務を全額肩代わりする。

 制度開始以来から今年7月15日までの保証承諾件数は累計114万8,905件、融資実績は20兆9,278億円に上る。およそ420万社といわれる全国の中小企業の実に4社に1社以上が利用している勘定。全国信用保証協会連合会は「異常な資金需要は落ち着いてきたが、平時と比べて引き続き高い水準が続いている」という。しかし、他方で企業の倒産水準が昨年9月以降、起伏を伴いながらも漸減傾向で推移しているのは、この「緊急融資制度」が一定の効果を上げている結果といえよう。

 中小企業庁の調査では、制度を利用した企業の8割超が「当面の運転資金を確保できた」と回答、また1割の企業が「毎月の支払い元金・金利が減少した」とするなど、制度の効果を評価し、好感している。緊急保証制度の保証期間が平均8年間と長いことや、100%保証によって金融機関のリスクが減り、金利引き下げを要請された金融機関がある程度それに対応したことも貢献していよう。

 ただ半面で、今年に入って制度を利用した企業の破綻が増えている。その貸し倒れは月200億円ペースに上り、保証協会が肩代わりした代位弁済額は6月末で2000億円を超えた。融資総額に対する代位弁済率はまだ1%台だが、「景気回復が遅れると最終的に10%に達する可能性もある」と中小企業庁はみる。仮に制度保証枠36兆円の10%なら3.6兆円もの国税が貸し倒れの補填に充てられ、国家財政をさらに圧迫する。

 株安に円高 ―― 景気回復どころか先行きますます不透明な日本経済。「緊急保証制度」で資金繰りに一息つくことはできても、業績回復の期待は持てない。そんな折の互いを誹り合う民主党代表選=日本の首相選びに、中小企業のイライラは募るばかりだ。

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