コラム


  弱き者、汝の名は・・・   No.476
 たとえば。医師からこう告げられたとする。「Aの治療法なら1年以内に死亡する確率が30%、Bの治療法なら1年以上生きられる確率は70%です。どちらの治療法を選びますか?」 少し考えれば、どちらの治療法でも生存・死亡率は同じだと分かる。それなのに、こういう言われ方をされた場合、ほとんどの患者は治療法Bを選ぶ。

 同じ結果を生む選択肢であっても、選択者のフレーム(心的構成)が違うと意思決定が異なってくる現象を ≪フレーミング効果≫ という。

 たとえば。ある店で、とても気に入った商品を目にした。しかし値段は20万円。手が出ず、買うのをあきらめた。ところが間もなく別の店で、前に見たのとほとんど同じような商品を、しかも2種類見つけた。1つは2万円、他の1つは8000円。そんな場合、多くの人が、安い8000円ではなく、高い2万円の商品を選ぶ。

 人は損得を考えるとき、その「絶対額」ではなく、最初にインプットした水準に比べた変化(差)に引きずられて判断する傾向を ≪参照点依存≫ という。

 たとえば。「あなたに無条件で100万円差し上げます。でも、コインを投げて、もし表が出たら200万円差し上げます。どちらにしますか?」 前者を選ぶ者が圧倒的に多い。しかし、仮にあなたが200万円の借金を抱えていたとする。そして「無条件で借金を半分にしてあげましょう。でも、コインを投げ、もし表が出れば借金を全額免除しますが、裏が出たら借金は変わりません。さて、どうします?」と条件が変わると、ギャンブル性の高い後者をあえて選ぶ人が大幅に増えるそうだ。

 このように、利益を増やす時は確実性を選ぶけれど、損失を減らす時は「賭け」に挑もうとする傾向が強まることを ≪プロスペクト理論≫ と呼ぶ。
 さらに。「あなたは優しいが、気が強い一面もある」「口には出さないが、深い悩みも抱えているし」 占い師にそう言われると、多くの人が「当たっている」と思う。

 しかも、誰にでも当てはまる曖昧な内容にもかかわらず、その性質が自分に都合が良ければ良いほど、また、そう告げた相手の地位、評判、専門性が高ければ高いほど、「その診断は正しい」と思ってしまう心理を ≪バーナム効果≫ という。

 選択を迫られるとき、私たちの心の周囲や奥底にはいかに多くの「落とし穴」が潜んでいるかを分かっておいてよかろう。まさに「弱き者、汝の名は人間」なのだ。

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