コラム


  「締め過ぎ」の弊害   No.464
 自分はいままでこんなことさえ知らなかったのか――と己の無知に愕然とすることが、たまにないだろうか。すでに旧聞だが先月31日放送のNHKテレビ総合「ためしてガッテン――永久保存! ねじの極意」を見た筆者がそうだった。

 番組では、同型のボルトナットを、力自慢の大人と、普通の小学生が、各々同じ方法で締め付けて見せた。その後、両方を振動機にかけ、振動を与えると、さて、やがて緩んできてしまうボルトナットはどちらか?――とわざわざ書くからには答えはお分かりだろう。そう、緩んでしまうのは大人が力任せに締めたほうだ。なぜか?

 ボルトナットがしっかり締まるためには、1、「座面」(ねじの頭の裏側の平らな部分)の摩擦 2、ボルトとナット両方のねじ面の摩擦 3、ボルトとナットを締め付け合う「軸力」の3要素が働く。ポイントはその3要素が効く割合で、「座面の摩擦」50%、「ねじ面の摩擦」40%、「軸力」10%であることが物理的計算で分かっている。

 そこでだ。大人が力任せにボルトナットを締めると、たとえ素材が金属でも、歪んだり陥没して「座面」の接地面積が減ってしまう。つまり、最も大事な要素の「座面の摩擦」力が弱まるため、振動を受けているうちに緩みやすくなる。その点、小学生の力程度なら「座面」が変形して摩擦が弱まることはないから、緩まない、のだそうだ。

 番組を見た配線工事会社の社員が個人ブログに書き込んでいた。「入社直後の研修で、ねじ締めには、一定以上の力では締まらない構造のトルクレンチを使えと教えられたのは、そのためだったのか。あれから38年。番組を見て理由が初めて分かった」と。ほかにも「初耳」と驚く人がネット上では結構多かったから、もし諸兄も同じだったとしても落ち込むことはない、と一応慰めて差し上げよう。

 そうした締め過ぎによる「座面」の損傷を防ぐのが「座金」。だから、面倒だからといって「座金」を挟むことを省く横着はしないほうがよいことも、番組で知った。

 なるほど、力任せに締め過ぎると素材を傷め、かえって「ねじ」がいつの間にか緩み、むしろ「ガタ」を生じる原因にさえなりかねない。だから、接する物同士の間に緩衝的な役割を挟み込むことも、とても大事 ―― 番組を見終わって一服しながら、そうなのかあ、社会の組成や、会社の組織も、理屈は同じではないのかと思った。

 鳩山内閣支持率が30%を割ったとの一部報道もある。何が原因か、誰もが知っている。 

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