コラム


  茶色い靴   No.461
 企業活動や社会情勢などについてのユニークな調査報告でも知られる産業能率大学が、「社長スタイル2010」のタイトルで社長のライフスタイルに関する調査結果(従業員10人以上の企業経営者697人が回答)を発表した。

 まず車。公用車は84人(有効回答191人中)、自家用車は261人(同574人中)が「トヨタ」を愛用、2位の「日産」(公用24人、自家用85人)に大差をつけた。3位は公用が「三菱」、自家用は「ホンダ」、高級なイメージのある「メルセデス・ベンツ」は公用では7位だったが、自家用では5位に入った。

 ファッションでは「最も多く使用したスーツは?」の問いに「洋服の青山」「AOKI」の量販店2社が1位、2位となり、スーツに対してはブランドのこだわりは見られなかった一方、ビジネスシューズについては有効回答140人中69人が「リーガル」と答え、2位の「マドラス」(8人)、3位の「ホーキンス」(6人)を大きく引き離した。

 回答者の半数が支持したリーガル。細革で靴の甲・中底・本底を縫い付ける「グッドイヤー・ウエルト式」と呼ばれる製法でつくられるこの靴は、型崩れしにくく、内蔵されたコルクが適度に沈むことで長時間履いても疲れないことから根強いファンが多い。

 靴に対してはたしかに好みやこだわりを持つ人は少なくない。しかし、その色についてはどうだろうか。「一定年齢以上の人の足元に目を向けると、圧倒的に黒いクツが多い。電車の中で向かい側のシートに座っている人の足元を見ても、やはり黒。まるで葬儀の席の玄関口だ」――著書「茶色いクツをはきなさい!」で藤巻幸夫氏はこう書いている。

 藤巻氏といえば、伊勢丹時代はカリスマバイヤーとして知られ、退社後は破綻した福助の経営再建に取り組み、現在は独立してシャツとトートバッグの店を運営するなど、ファッションについて一家言を持つ人物である。その彼が著書のタイトルに込めたのは、慣れ親しんでいるルールや常識を壊すことで、たくさんの気づき=アイデアが生まれるという、自身の実体験に基づいた強い思いである。変化を与えて、自分で自分を驚かせることで、凝り固まった頭を柔軟にしてクリエイティブの感度を高める――。そのきっかけとして、靴という身近な存在から見直してみてはどうかと提案しているのだ。

 「発想のヒントは半径3メートル以内にいっぱい転がっている」はアニメ監督の宮崎駿氏の言。なるほど。「おしゃれは足元から」ならぬ「発想は足元から」である

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