コラム


  優しく温めよう   No.454
 評判を聞き、齋藤真嗣(医学博士)著「体温を上げると健康になる」を図書館で借りようと、ネットで蔵書検索してみて驚いた。名古屋市内20図書館に計24冊所蔵されている同書の全部が「貸出中」。しかも現在の「予約」がなんと502人。諦めて書店で買い求めた同書の帯には「50万部突破!」と新たに印刷されていた。なるほど。

 日本人の平均体温が低下している。齋藤氏によると、1950年代に36.8~36.9℃だった日本人の平均体温は、2009年には36.2℃まで低下。同氏が3年間で治療した患者1万2000人の95%以上が、平均体温36℃以下の「低体温症」だったという。

 平均体温が低下して最も恐いのは、「免疫力」が弱まることだ。「体温が1℃低くなると、免疫力は30%低下する」と齋藤氏。寒い冬には、風邪や肺炎、脳卒中、心筋梗塞など循環器系のみならず、あらゆる病気での死亡率が高くなるのはそのためだ。

 人間は健康人でも1日5000個のガン細胞ができる。しかし本来はそれを免疫細胞(リンパ球)が死滅させてしまうので問題ないのだが、体温が下がり免疫力が落ちると、ガン細胞を殺し切れないばかりか、増殖させてしまう。平均体温35℃台が、ガンが最も増殖しやすい「適温」だそうで、平均体温を1℃上げると体内の5000種以上ある酵素の働きが活発化、今度は免疫力が「5倍以上アップする」という。

 低体温化を招いた原因は、生活環境の変化に伴う自律神経の乱れ、エアコン普及による発汗機能の低下、生活苦や人間関係、家庭問題に起因するストレス等々さまざまだが、最大の理由は「運動不足による筋肉の弱化」だそうだ。「筋肉」は、体温の40%を生み出す人体で最大の「熱」生産器官。寒かったり小便の後に体が震えたりするのは、筋肉を震わせることで体温を保とうとする重要な役割を担っていることを表している。だから、運動不足で筋肉が弱まると、平均体温が下がってしまうのだ。

 そこで「筋肉トレーニング」を勧める齋藤氏だが、しかし「筋トレは3日に一度で充分。毎日するのは逆効果」と言う。「運動のし過ぎによるストレスも体温低下の原因になるから」だ。ほかにも「風邪気味ぐらいで薬を飲むのは絶対にやめなさい」「微熱なのに解熱剤を使うのは本末転倒」など、読むと「目からウロコ」の思いがする。

 「手当てする」―― 病気やケガを治療することを言う。昔は実際、医者が患部に直接手を当て、温めて治した。そう、身体のケアには本来、そういう優しさが大事なのだ。

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