コラム


  脳   No.452
 個体差はもちろんあるが一般的に、犬は猫より「食い意地」が張っている。出された食事をあっという間に平らげ、もっと欲しいと催促し、与えればまた食べ尽くして際限がない。食べ残したままどこかへ行ってしまうこともある猫との大きな違いだ。

 猫はもともと単独生活を苦にしない動物で、独りでする狩猟も上手。これに対し犬は狼と同様、群れて暮らし、集団で狩猟し、獲物を分け合って食べる。しかも狩りに失敗することもあるから犬は、食べられる時に食べられるだけ食べておこうとする「食い溜め」習性が、人間に飼われて暮らすようになってからも残っているためだ。

 ただ、「食い意地」が張っているという点では、実は人間は犬を笑えない。なぜなら、日本でもBMI(=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m))数値が「25」以上の肥満者が成人男性の29%、女性でも21%と決して少なくないのは、諸兄も日々思い当たる通り、なかなか自制が効かない人間の「食い意地=食べ過ぎ」が引き起こす結果に他ならないからだ。

 しかし、「やれやれ自分は犬並みか」と落ち込むこともない。人間の「食い意地」が張っているのにも理由があって、それは人間の「脳」が、他の動物より発達しているからだ。大人の人間の脳は平均1450g、体重の2.5%足らず。大きさはその程度に過ぎないにもかかわらず人間の脳は、正常に機能するために、全身活動の維持に必要なエネルギー(カロリー)の実に20~25%を必要とする。人間に最も近いチンパンジーの同9%に比べ、人間の脳が必要とするカロリーの、群を抜いた多さが分かろう。

 その脳のエネルギー源は、血液中のブドウ糖だけ。ブドウ糖が足りなくなると脳の機能が低下し、最悪は生命の危機を招く。ブドウ糖は物を食べることでのみ摂取されるから、脳は必要カロリーが不足しないよう、「空腹感」を適時発信して摂食を促す。

 そう、人間が「お腹が空いた」と感じるのは、食物を胃腸で消化し終わったからではない。なぜなら、胃を手術で全摘出しても「お腹は空く」し、逆に、何も食べず点滴だけでも栄養を補給し続けていれば、「お腹が空いた」とは感じない。つまり「空腹感」は、脳がエネルギーの補給を必要と判断した際に発する「信号(シグナル)」なのだ。

 そんなふうに空腹感を覚えた時や寒い冬には、体調を維持しようと脳の活性が高まり、注意力、記憶力も上向くそうだ。「頭寒足熱」が勧められる理由はそこにある。

 そう聞いて、思うのだ。近頃「頭を冷やし」たほうがよいと思える人が、多過ぎると。

コラムバックナンバー

What's New
トップ
会社概要
営業商品案内
コラム
大型倒産
繊維倒産集計