コラム


 桜 考  No.411
 名古屋地方の今年のソメイヨシノの開花日は3月19日(名古屋地方気象台)。平年より9日、昨年より3日早い開花は、各地と同様の傾向らしい。ただ例年と少し違う気がするのは、三分ほどまで咲けばその後はもう一気に満開になっていたのがいつもなのに、今年はつぼみのまま足踏みしている木が多いことだ。先週から日本に流れ込んでいる寒気のせいだろうか。今朝も出勤途上に市内で見かけた気温表示は「1℃」。この分では、昨年は3月29日だった満開日は、むしろ少し遅れるのかも知れない。

 ともあれ、今日3月27日は「さくらの日」。二十四節気をさらに約5日ずつ3つに分けた七十二侯の、ちょうど「桜始開(さくらはじめてひらく)」に当たるという根拠には納得できても、「3×9(さくら)=27」という語呂合わせには苦笑する。日本さくらの会が1992年(平成4年)に制定したそうだが、思ったより歴史が浅いのも意外だ。

 親しまれ、愛される花だからこそ、「桜」をテーマにした歌がここ数年ヒットしている。先駆けは2000年4月に発売され200万枚を突破した福山雅治「桜坂」だろうか。以来、コブクロ「桜」、ケツメイシ「さくら」、河口恭吾「桜」、森山直太郎「さくら(独唱)」、いきものがたり「SAKURA」等々。「全部知らん」とつまらなそうな顔のオジサン世代には、坂本冬美「夜桜お七」も大サービスで加えておこうか。

 その点、誰もが知っている桜の歌といえば古謡「さくらさくら」だろう。ただし、問題はその歌詞。「さくらさくら/やよいの空は/見わたす限り/かすみか雲か/匂いぞ出ずる/いざやいざや/見にゆかん」だと諸兄の多くは思っていらっしゃろう。しかし、最近の小学生の教科書に載っている歌詞は、こうだ。「さくらさくら/野山も里も/見わたす限り/かすみか雲か/朝日ににおう/さくらさくら/花ざかり」

 1967年(昭和42年)の指導要綱で後者に統一されたその理由を調べてみたが分からなかった。さらに1989年(平成元年)の指導要綱の変更で中学生の教科書では前者が採用され、いまは2つの歌詞の「さくらさくら」が並存するという理由も不可解。これでは、爽やかで優しく品位があり、いかにも日本的なこの歌を、何かと議論が多い「君が代」に代わって国歌にしようという一部の意見も、多くの賛同を得られまい。

 それにつけても、だ。「花は桜木、人は武士」と、男としての散り際の潔さが語られたのは今は昔。2大政党の党首が揃って地位に拘るありさまは美しくない。興ざめだ。

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