コラム


 「一生不敗」の果てに  No.408
 不思議な勝ちはあっても、不思議な負けはない――。「運と偶然で勝てることはあっても、負けるときは相応の理由がある」と戦国の武将、武田信玄は言った。一生不敗のままで生涯を遂げた信玄になぞらえ、「自分も一生不敗で終わりたい」と口にしていた大島健伸氏。その大島氏が会長を務める商工ローン大手、SFCGが負債3380億円を抱えて、先月23日民事再生法の適用を申請した。

 資金繰りが限界に近づいていた兆候は確かにあった。貸付金の回収を急ぐあまり、債務者に一括返済を要求する旨の文書を昨年秋に送ったことが表面化。強引なやり方に批判が集まり、大きく信用を落とす羽目になった。貸付先に占める割合の大きい不動産、建設業界が、金融危機が深刻化した昨年夏頃からかなり厳しい状況に追い込まれていたことも「回収難」の要因の一つだろう。ボディーブローが効いていたところへ、万策尽きて2月の決済資金が手当てできなかったことが止めになった。

 大島会長がSFCG(旧商工ファンド)を創業したのは昭和53年。保証人貸付、手形担保貸付、不動産担保貸付など主に中小企業に対して高利で融資し、平成9年10月には東証2部上場、11年7月には東証1部に昇格し、急成長を果たしていた。

 しかし、その後は逆風が吹き始めた。強引な取り立てが社会問題になり、大島会長が国会に証人喚問される事態に発展。さらに18年12月の貸金業法改正で、収益源としてきた「グレーゾーン金利」が撤廃され、利息制限法の上限を上回る「過払い利息」の返還請求が相次ぎ、経営環境は厳しさを増していた。

 「SFCGはタクシー、銀行はバスや電車」と表現した大島会長。銀行がカバーできない資金ニーズにスピードと利便性で対応し、そのおかげでこれまでに多くの企業が救われた。その意味で同社の存在意義は認めるところであり、だからこそ1日も早く再建の道筋をつけなければならない。多くの中小・零細企業が窮地に立たされる前に……。

 記者会見で大島会長は「金融危機で国内外を問わずほとんどの金融機関から新たな融資を受けられない状況だった」と語り、資金繰りの行き詰まりが直接の原因だとした。しかし、業績を伸ばすために社員に強引な取り立てを課し、それが元で社会的信用を失い、資金調達が一層困難になったという側面も否定できまい。「不敗」に固執した時点で、経営破綻という「負け」へのカウントダウンはすでに始まっていたのではないか。

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