コラム


 複雑な思い  No.401
 俳優・仲代達矢が主宰する「無名塾」には現在28人の「食えない役者の卵」たちがいる。普段はバイトや臨時の派遣などで食いつないでいる彼らが「いよいよ苦しくなったら、どうします?」と聞かれて、仲代が答えている。「そうですね、出演料を、私も俳優も裏方も、みんな同じにします。そうすればみんなにお金が行き渡る。小さな組織ですが、経営者とはそういうものではないでしょうか」(4日付朝日新聞「耕論」インタビューで)。日本の財界を代表する大企業トップには耳が痛かろう。

 「派遣切り」の話題がマスコミで扱われない日がない。厚労省調査によると、今年3月までに解雇・雇い止めで職を失う非正規社員は8万5000人。12月下旬時点での聞き取り結果だから、今後さらに深刻化する心配も少なくあるまい。

 いま大量の「派遣切り」を招いた原因は、小泉政権が、産業界の要請を汲んで派遣対象業種を製造業にまで広げた「規制緩和」にあるとの批判的論調がマスコミには多い。が、他方で日本の失業率が4〜5%台と欧米に比べて低水準にとどまっているのは、同法改正で求職者の雇用機会が増えたという「功」の側面も率直に評価せねばなるまい。

 問題は、法改正当時は今回のような大不況の到来を想定しておらず、「セーフティネット」が用意されていなかったという初期の「制度設計ミス」が、いま混乱を大きくしているのは事実。改めてその不備への早急な対応が求められるところだ。ただ――。

 年末年始の日比谷公園「派遣村」に集まった500人の、「その後」を追ったテレビ報道を数日前に見た。当時、急きょ開設された相談窓口には約4000件の求人が用意されたが、そこで仕事を決めたのはわずか139人だったそうだ。「そりゃあ、やりたくない仕事なら結構ありますよ。でもね…」と、顔を隠しながらインタビューに応じた40代男性は、「とりあえず生活保護を受け、また探してみますよ」と話していた。

 昨年11月時点での有効求人倍率は0.76。それだけを見るとたしかに「深刻な就職難」だ。しかし分類された66職種中の28職種――例えば建設躯体工事、保安、接客・給仕、社会福祉関連等々では、求人が求職を上回っている。にもかかわらず、「やりたくない仕事だから、行かない」――「こんな時に(選り好みは)甘えではないかと言われれば、うーん、否定できませんねえ」と、口ごもりながらも答えてはばからない人たちが、どうやら少なくなさそうな現実を見ると、思いはかなり複雑にならざるを得ない。

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