コラム


 「ねぢ」を巻いて  No.400
 新年のお慶びを申し上げますとともに、倍旧のご鞭撻を心からお願い申し上げます。

 さて諸兄は、年末年始をどう過ごされただろうか。「ステイケーション(Staycation)」という新造語がある。2001年の「同時多発テロ」後、沈滞した消費傾向を指す言葉として米国で生まれた。「stay+vacation」の合成語で、遠出をせずに自宅や近場で休暇を過ごすこと。日本では「巣ごもり消費」と表現されている。

 年末にかけて景気悪化が急速かつ一段と鮮明になった日本経済。賃金や雇用への先行き不安心理から、海外旅行や高級服飾ブランド品が売り上げを落とした。他方、クリスマスケーキやおせち料理、ブルーレイレコーダーなど家庭内で使う物の売れ行きが好調だったというこの年末年始の消費動向は、たしかに「巣ごもり」状態を映す。

 「高級ブランド」と書いたが、「ブランド(brand)」の語源は、牧場で自分の飼い牛と他人の牛を区別するための「焼印(burned)」に由来する。今年は、その丑年。

 農耕民族の日本には、牛にまつわる諺が、中国の故事に由来するものも含めて多い。【鶏口牛後】大きな組織で使われるより、小さな集団の長になるほうがよい。【角を矯めて牛を殺す】些細なことを直そうとして、かえって肝心なものを台無しにする。【牝牛に腹を突かれる】(普段はおとなしい牝牛のように)弱いと思って油断していた相手にやり込められる。そして【商売は牛のよだれ】途切れることのない牛のよだれのように、商売は、わずかな利益を積み重ねながら細く長く続けることを旨とすべし、等々。

 ただし丑年は、経済界にとっては残念ながらあまり良い年回りではない。戦後5回を数える丑年は、株価の年間騰落率が平均△11.4%と十二支中の最悪。景気がよかったのは岩戸景気に湧いた1961年(昭和36年)ぐらいで、前回の1997年(平成9年)は山一證券、三洋証券、北海道拓殖銀行、日産生命保険など金融破綻が相次ぎ、ヤオハンジャパンも事実上倒産。1985年(昭和60年)は日米経済摩擦で自動車、鉄鋼輸出が打撃を受け、三光汽船が倒産。1973年(同48年)は第一次石油危機から物不足パニックが起き、株価も5000円を割った――などと年初から話が暗くならざるを得ないのが辛い。

 高村光太郎は、詩「牛」の中で書いた。「牛の力は強い/しかし牛の力は潜力だ/弾機(ばね)ではない/ねぢだ/坂に車を引き上げるねぢのちからだ」 政治を頼りにはできない。各々が内に秘める「馬力」ならぬ「牛力」を奮い立たせ、不況を乗り切ろうではないか。 

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