コラム


 ささやかな夢  No.395
 今年は和服のサンタ姿で登場した西田敏行に、テレビCMでああも派手に煽られると、やっぱり買わざるを得ない気持ちになってくる。年末ジャンボ宝くじが25日から発売された。1等2億円が70本、2等1億円が140本。加えて今年は「ジャンボ30年記念感謝賞」100万円が7000本用意され、楽しみもちょっぴり増えた。

 ただし、今年の発売予定額は2100億円で、昨年より120億円減った。庶民が、ささやかな夢にさえお金を使えなくなっている厳しさを読んだ結果なら、発売元(全国自治体・17指定都市)の経済感覚は、麻生さんより敏感と言うべきかも知れない。

 日本での宝くじの起源は江戸時代初期、現箕面市・瀧安寺で正月の参拝者の中から3人の当籤者に、お金ではなく「福運守」を授けたのが起こり。その後、「守り札」を金に代えた「富くじ」が全国で売り出されたが、流行し過ぎたため、幕府は「天保の改革」(1842年)で発売を禁止。以来、時流れて昭和20年7月、政府が軍事費の調達を目的に「勝札」を売り出すまで、日本には公認の「宝くじ」はなかった。

 その「勝札」はしかし抽選日前に終戦になり、ただの紙切れに終わってしまったが、政府は同年10月、浮動購買力を吸収して戦後の激しいインフレを防ぐ「政府第1回宝籤」を発売。翌21年には現在の宝くじの礎になる「地方宝くじ」が始まった。

 当初は100万円だった1等賞金は43年1000万円、53年2000万円、55年3000万円、60年5000万円、平成8年1億円と高額化、11年のドリームジャンボでは2億円になった。が、昨年末ジャンボでは、1等2億円74本のうち札幌市と大分県佐伯市で売られた2本、2等1億円も14本が、来年1月6日の支払い期限までほぼ1カ月の17日現在、まだ換金されていないそうだ。はっきり言って、その当選券を欲しい。

 もし1等が当たったら――と誰もが夢見る使い道の上位は 1.貯蓄42% 2.借金返済23% 3.住宅19% 4.旅行14% 5.車11%(みずほ銀行・平成19年版「宝くじ長者白書」)。案外慎ましやかではあるけれど、サラリーマンや中小・零細企業の経営者なら多くがまず言う答えは、たぶんこうだろう。「当たったら? もちろん、仕事辞めるよ」

 そんな庶民にも今年は、大金ではないけど漏れなくもらえると聞き悪い気はしていなかった「定額給付金」のプレゼント。しかし、年末どころか年度末にさえ危ういそうだ。

 その程度の楽しみさえ約束通り与えられない政治って、一体誰のためなのかと思う。

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