コラム


 縮まる結婚年齢差  No.392
 「よい女 普段ぶっ散らかしている」「よい男 貧乏神の氏子なり」――江戸川柳の2句である。片付け下手や素寒貧は本来、容姿とは無関係。でも美男美女を羨み、つい何か難癖をつけてみたくなる庶民気質は古今同じようで、微笑ましい。

 ほかに、こんな戯歌(ざれうた)も残る。「世の中は年中三月 常月夜 嬶十七 俺三十 負わず借らずに 子三人」 旧暦3月は現在の4月だから、この歌は「一年中春のような陽気で、夜毎に月が照り、女房は17歳、自分は30歳で、借金がなく、子供が3人いるのが一番いい」という、当時の庶民(ただし男)の理想を詠んだものだ。

 中で気になったのは「嬶十七 俺三十」の部分。差し引き13歳という「年の差カップル」が、当時の(これまた少なくとも男にとっては)理想だったのだろうか。

 その平均結婚年齢が、男女とも年々上がっている。同時に、夫婦の年齢差が年々縮まっている。1970年(昭和40年)に男26.9歳、女24.2歳だった結婚年齢(初婚時)が、2006年では男30.0歳、女28.2歳(厚労省「人口動態統計」)になった。70年に比べると男は3.1歳、女は4.0歳上昇した。とくに女性の晩婚化傾向が強いことから、初婚時の夫婦の平均的な年齢差は、70年の2.7歳から06年は1.8歳へと縮まっている。

 社会環境の変化が背景にある。かつての日本で女性が年の離れた年上男性と結婚する例が多かったのは、経済力が男性側に集中し、女性は経済的に男性に依存せざるを得なかったからだ。しかも当時は終身雇用・年功序列型賃金の時代。女性が結婚の条件として「安定した生活」に最も重きを置こうとすれば、ある程度年上の男性を相手に考えるのは当然だった――とはエコノミスト・門倉貴史氏の分析である。

 しかし、女性の社会進出が進むにつれ、女性が男性に経済的に依存する必要性が薄れてきた。格差はまだあるものの、85年は男性の59.6%に止まっていた働く女性の所定内給与は、07年には66.9%と、差がかなり縮まった(厚労省「賃金構造基本統計調査」)。男女の賃金格差がこのペースで縮小し続ければ、初婚時の男女の年齢差は、2015年には1.52歳に縮まるとの予測がある。並行して、70年の10.3%から06年には23.5%に高まった「年上妻」の割合も、ペースをさらに上げながら増え続けるだろう。

 そうした夫婦関係の変化が、今後の消費行動や性向にどんな影響を与えるのか――興味と不安を抱く。それぞれの分野で、対応すべき商品政策や営業戦略を考えておきたい。

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