コラム


 最後のサプライズ  No.386
 日経新聞だけが53%だったが、ほかは読売新聞49%、共同通信48%、毎日新聞45%といずれも50%を下回った麻生新内閣の支持率。少なくとも筆者には意外に思えた低い支持率=麻生さんの不人気ぶりに少し驚いた。

 しかし、驚いたといえばやはり小泉元首相の「サプライズ引退」だろう。「散りぬべき 時知りてこそ 世の中の花も花なれ 人も人なれ」――敵の人質にされそうになり自ら命を絶った細川忠興の妻・細川ガラシャの辞世の句を用い、「パッと散るからきれいなんです。人も引き際が大事」と日頃口にしていた彼らしい引き際である。

 ただ、潔かったとはいえそれが美しくまで映ったかどうかは、人によって感じ方は違う。今朝の新聞各紙の紙面には、小泉改革の「光と影」「功と罪」の対語が躍る。

 北朝鮮拉致被害者の帰国実現、道路公団や郵政事業の民営化などの「聖域なき構造改革」、各種の規制緩和の推進等々、5年5カ月間の在任期間中に彼が成してきた功績は素直に高く評価されるべきだ。半面、それらの施策を強引に推し進めた結果が、「地方」や「弱者」には辛い「格差社会」を招来したことは否定できず、最近はむしろ「光・功」より「影・罪」の部分に目が向けられることが多くなってきた。「壊すだけ壊し、道半ばで放り投げた感じ」――「引退」のニュースを聞き、ある新聞の取材に答えた帰宅途中の会社員の感想が、国民の不満を代弁しているように思う。

 そうした世評の変化に敏感な小泉サンはまた、麻生新内閣でも自分とは距離を置く立場の閣僚が多く登用されたことからも、いまが引退の「潮時」と判断したのだろう。

 小泉サンの引退に口を挟む資格などない。だが、次男を後継にするというのは、いかがなものか。「小泉さんは派閥政治を否定した。世襲政治にも一線を引く潔さがあれば株が上がったのではないか。やはり人の子だったのか」(松沢成文・神奈川県知事) 「小泉氏は既成の政治家にはまらない格好良さがあったが、なんだアンタも普通の人かとがっかりした」(フリープロデューサー・木村政雄氏)とのコメントに同感である。

 麻生さんから幹事長就任を打診された森喜朗元首相は、「晩節を汚したくないから」と断ったそうだ。森さんにとってなぜそれが「晩節を汚す」ことになるのか不思議に思ったと同じぐらい、次男を後継にするという小泉サンの「晩節」も理解しがたい。

 「引き際」で大事なのは、タイミングもさることながら、一番は「引き方」だと思う。

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