コラム


 脇 役  No.383
 色にはそれぞれの持つイメージがある。カラーコンサルタントの高坂美紀氏は20年以上にわたって、食品や薬、キッチン、家などあらゆるものが売れるようになる「視覚的なしかけ」をアドバイスしてきた。光の波動である色は、目の奥で電気信号に変わり、その情報は脳の中枢へ届き、全身のホルモン分泌や脳の活動電極を変え、人の記憶と感覚に影響を与えるのだという。

 高坂氏によれば、もっとも人の記憶に残るのは「赤」だが、朝、人を惹きつけるのは「赤」と「オレンジ」であり、これが昼になると「黄」「緑」「茶」へと変化する。そして午後4時以降になると、「青緑」「青」「紫」を見たいコンディションになるという。時間の流れとともに「主役」になる色が変わるという指摘は興味深い。

 さて、清楚で平和なイメージを持つ色は「白」である。そして、そのイメージのまま「清らかな心」「親切」「無邪気」などの花言葉を持つのが「かすみ草」だ。小さな花が霞をかけたようにたくさん咲くことからこの名がつけられた。原産地は地中海沿岸で、明治時代に日本に入り、1970年代から本格的に生産されるようになった。

 福島県昭和村。日本一のかすみ草の産地である。以前、NHKニュース「おはよう日本」で昭和村のユニークな取り組みが紹介された。花束やフラワーアレンジメントの「脇役」であるかすみ草を「主役」にしようという試みだ。それは、切ったかすみ草の茎を染色剤につけ、白いかすみ草を黄色や水色に変身させることで、これまでのようなバラやガーベラの引き立て役から主役に変身させるというものだ。実際、染色されたかすみ草はこれまでのイメージを覆す、華やかで存在感のある花に生まれ変わっていた。

 脇役が時に主役になる眺めは悪くない。しかし現実には、演劇界やスポーツ界に限らず、企業社会においても、脇役が主役になれるケースはそれほど多くはない。土台を支える脇役や裏方に身を置く者のモチベーションをどう上げていくのか――。NHK会長の福地茂雄氏はアサヒビール会長時代、あるインタビューで企業を演劇にたとえ、こう語っていた。「大事なのは目配りである。全員が主役という演劇はあり得ない。一隅を照らして脇役にも目配りしないと芝居にならない」と。

 脇役に光を当て、その存在を認め評価することもトップ、リーダーに課せられた役目である。主役と脇役のモチベーションがかみ合って初めて組織の歯車は機能する。

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