コラム


 続「ふるさと納税」  No.375
 「メロンやシシャモ」北海道むかわ町、「地元天然水の詰め合わせ」福島県北方市、「特産品や市観光施設の年間パスポート」静岡県三島市、「地酒などの特産品詰め合わせ」広島県神石高原町、「特製トイレットペーパー」佐賀県……趣向を凝らした商品・サービスが並ぶのは「『ふるさと納税』でもらえる豪華特産品」である(「サンデー毎日」調べ)。自治体による「ふるさと納税」の獲得合戦が活発化している。

 5月の本欄でも触れたが、「ふるさと納税」は、自分の生まれ故郷など好きな地方自治体に「寄付」をすると、寄付金額から事務負担料5000円を引いた残額分が、翌年の確定申告時に住民税から控除されるもの。「ふるさと納税(・・)」と呼ばれてはいるが実際は「寄付」で、新たに創設された制度でもない。従来からある「寄付金控除」の、これまでは10万円以上だった控除適用下限額を5000円に大幅に引き下げたほか、控除の仕方や計算方法を見直すことで、庶民でも気軽に寄付しやいよう改定されたのだ。

 高校卒業までに要する公費は一人1600万円(内閣府調査)だそうだ。しかし、そうして「地方」で育った若者が働き始めて「納税者」になった時、落とされる税金の多くは地元ではなく、出て行った先の都会。税収不足―財政難に苦しむ「地方」が、「ふるさと納税」の獲得についつい力が入るのも無理からない。「プレゼント大作戦」のほか、東京・大阪など大都市の出先事務所に専用窓口や専従班を設けた自治体もある。

 「自治体の過度のPR合戦は制度の趣旨に反する」(神田真秋・愛知県知事)――地方出身者が多いため「ふるさと納税」では逆に減収の心配もある自治体には、風潮を問題視する声もあるが、納税者の行動は、特典に目が眩むほど安直ではなさそうだ。

 岩手・宮城内陸地震で大きな被害が出た宮城県栗原市。6月2日から受付を始めた「ふるさと納税」の、14日の地震前までの申し込みは4件、18万5000円だった。それが地震後15〜25日は12件、83万5000円と急増。7月2日現在では累計91件、223万円にと勢いが衰えないという。ほとんどが栗原市とは縁のない人々からだそうだ。
給料はここ数年、上がらない。どころか下がっている。今月からはガソリンをはじめ生活用品が一斉に値上がりした。家計の苦しさに悲鳴を上げながら、それでも、もっと困っている人々に、ささやかかも知れないが支援の手を差し伸ばす国民は、だから、だからこそ、税金を無駄遣いして平気な役人、無策の政治家を、絶対に許せないのだ。

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