コラム


 波紋が・・・  No.353
 経済界に今後、少なからぬ波紋を広げる判決になりそうだ。日本マクドナルドの現役店長が残業代の支払いを求めて起こした訴訟で、東京地裁は先月28日、2年分の残業代など約755万円の支払いを会社に命じる判決を下した。「店長は管理職だから残業代の支払い対象にならない」とした会社側の主張を退け、「店長の職務・権限は店舗内の事項に限られており、実質的な管理監督者には当たらない」と判断したのだ。

 今回の判決が、多くの企業にとっても大きな関心を持たざるを得ない最大の注目点は、裁判所が示した「管理職」の定義だろう。労基法が定める「労働時間の規定」の適用を除外され、何時間働いても残業代が支払われない「管理監督者(いわゆる管理職)」を、東京地裁は今回、「経営と一体化し、重要な職務と権限を有しており、厳格な時間管理を受けず、一般の労働者と比較して優遇された地位にある者」とした。

 さて現実はどうなのか。裁判所が示したような「経営と一体化」するほど「重要な職務と権限」を与えられている管理職が、いま企業の現場でどれほどいるだろうか。

 とくに近年、大企業に限らず多くの中小企業でも、経営近代化や実力主義への転換の名の下、本音は不況対策の一環として、人件費削減を企図した成果給制の導入や、残業代を支払わなくて済む「管理職」の登用を積極的に推し進めてきた会社が少なくない。中には部下のいない部課長すら見受けられる現状は、「偽装管理職」と呼ばれて否定できない実態がある。それは法的には「アウト」だと今回の判決は示したのだ。

 日本マクドナルドは即刻控訴したし、今回の判決の影響が直ちに他に及ぶわけではない。しかし、これに先立つ22日、紳士服チェーンの大手コナカの元店長が未払い残業代の支払いを求めて起こした労働審判で、やはり会社側が解決金600万円を支払うことで合意せざるを得なくなった例を見ても、「偽装管理職」の実態について、司法や社会の考え方が、ある方向に固まりつつあるという「時代の流れ」を無視できない。

 人件費など経費節減は、もとより極めて重要な経営課題だ。しかし、経費を削れば企業が成長するわけではない。売り上げをどう伸ばすか、高付加価値商品をどう開発し収益を確保するかに最大の関心と努力が払われなければなるまい。経営者には残業も「タイムレコーダー」もないのはなぜか――。それは「特権」だからでは決してない。会社の成長のために何をすべきかのアイディアを、24時間フルに考えるのが仕事だからだ。

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