コラム


 これから冬本番の3業界  No.351
 地球温暖化の危機が叫ばれる昨今では、数日来の寒さも「これが本来」と甘受せねばなるまいか。18日から冬土用入り、21日は大寒。一年で最も寒い季節を迎えている。

 ただ、自然の寒さは受け入れても、人為的要因が引き起こす経済の冷え込みは何とかしてほしいと思うのだが、むしろこれからが冬本番という業界も、いくつかある。

 昨年6月の建築基準法改正で泣いているのが建築とその関連業界だ。建築確認申請の提出から許可が下りるまでの時間が以前に比べて著しく長くかかるようになり、人員や資材の手当て、納期など多くの面に混乱を招いている。当然それは資金繰りに大きな影響を及ぼし、中小業者を中心に倒産・廃業に追い込まれる先が増加。内外装、電気・水道・衛生設備、家具インテリアなど関連業界にも波紋を広げている。

 今回の法改正はあの「姉歯偽装事件」が発端。命の安全を脅かす悪質な偽装を根絶するため、審査基準の厳格化は当然の措置だが、他方で、改正基準をめぐって審査する側・される側で解釈・理解の違いがあり、業務の遅滞を招いているとの声も聞かれる。

 過払い金の返還に追われる消費者金融業界も、いま真冬の只中だ。昨年9月、東証1部上場の消費者金融「クレディア」(静岡)が民事再生法を申請し経営破たんを表面化したが、その原因が数字にはっきり表れている。それは19年3月期決算時点で240億8200万円だった売上高にほぼ匹敵する213億4100万円もの巨額の当期損失。いわゆる「グレーゾーン金利」の廃止に伴う「過払い金返還請求」に備えて貸倒引当金を積み増すよう会計基準が変更され、財務内容が一気に悪化したのだ。同様の問題を抱える消費者金融業者はいま、かつてない経営危機の局面にさらされている。

 この消費者金融業界による顧客選別=貸し渋りで遊戯人口が減ったうえ、風営法改正の影響というダブルパンチを受け経営が悪化しているのがパチンコ業界だ。中でも、大当たりが出ることで人気のあったパチスロ「4号機」が、射幸心を煽り過ぎるというので昨年中に撤廃され、ギャンブル性の低い「5号機」に入れ替わった。業界6位のパチンコチェーン「ダイエー」(会津若松)が昨年4月に民事再生法を申請したのも、こうした来店客の減少と設備入れ替えに伴う投資負担が大きな原因になった。

 いずれも、必要だったとはいえ法の改正が、結果的に経済に影響を及ぼし、企業経営を苦しめているという皮肉な現実に、どこか腑に落ちない気がしないでもないが。

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