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増える訪日外国人 No.913

新緑を求めて観光地は人であふれている。特に外国からの観光客が目立つ。毎年増え続ける訪日外国人、2017年の2869万人に対して、2018年は3119万人と初めて3000万人の大台を超えた。台風や地震が重なり、前年比8.7%増にとどまったが、オリンピックが行われる2020年は4000万人と予測されている。

日本を訪れる外国人は観光客ばかりではない。2018年10月末現在の外国人労働者数は146万463人(厚生労働省)。そして政府は4月から施行された入管法改正で、この5年間で最大34万5150人を受け入れると発表した。それだけ外国人が増えると、観光客の場合は宿泊施設、働く人の場合は住まいが問題となる。入管法改正でやってくる外国人は、受け入れる企業による住宅提供が主体になるとみられるが、直接、賃貸住宅を契約するケースもこれまで以上に増えると予想される。

しかし外国人に抵抗を抱く賃貸住宅のオーナーは少なくない。法務省の調査によると、この5年間に住む家を探したことのある外国人のうち、「外国人であること」を理由に入居を断られた経験のある人は4割近くにのぼる。外国人入居者を受け入れる際の問題として、ある賃貸経営情報誌は次のような事例を挙げている。

外国では契約者の権利意識が強く、家賃を払っているのだから使い方は自由と考える。そのため、友人を住まわせたり、又貸しするケースがある。また海外では入居者が住まいの改修を自由に行えることが多く、退去時に改修した部分を元に戻す必要がない。もともと原状回復という概念がなく、次の入居者やオーナーが修繕や不要物の撤去を行うという。日本では、家賃は前月末までに入金するのが常識だが、海外では当月中に入金すればよいという国が多い。またゴミ出しや騒音禁止といった日本のルール、マナーを理解していないことも少なくない。

さらに言葉の壁や、日本在留資格の照会、外国にはない保証人制度などもある。外国人受け入れの専門的なノウハウを備えた仲介業者や管理会社が必要となるのも事実で、オーナーが二の足を踏むのも理解できる。観光地や職場で、増える訪日外国人の第一義的なメリットばかりに目が向くが、宿泊する施設、住む場所など多くの問題が山積している。生活習慣の違いや日本のルールの無知などが招く課題をどう克服するか、これまで以上に両者のコミュニケーションが求められる。 <

「旬」を味わう No.914

旬のモノを食べると身体に良いといわれる。「旬とは生育環境が整った自然のなかで育てられ、もっとも成熟している時期」を指すため、その時期に収穫した食材は、いちばん栄養価が高くおいしいからだ。しかし、スーパーに行けばほとんどの食材が1年中手に入る昨今、どの食材が旬なのかわからないこともしばしば。食で感じる季節感もだんだん薄れてしまっているようだ。

日本人は昔から五感に訴える様々なものから四季を感じとっていた。それは初夏の風物を詠んだ「目には青葉 山ほととぎす 初鰹」(山口素堂)という江戸時代の有名な俳句からも伺い知れる。

新しいもの好きの江戸っ子は、とりわけ旬の季節に先駆けて収穫する初物を好んだ。別名「はしり」とも呼ばれる初物は、縁起が良く、食べると寿命が75日延びるともいわれ人気をよんだ。筍、胡瓜、茄子、白魚、松茸など、数ある初物のなかでいちばんの人気だったのは、春から夏にかけて黒潮にのって太平洋沿岸を北上してくる「初鰹」。戦国時代の武将、北条氏綱が舟に鰹が跳びこんできたのを見て、「戦に勝つ魚」が舞い込んできたと喜んだ逸話から、縁起物としても重宝され、特に初鰹は高値で取引された。

初物を誰よりも早く食べるのが“粋”とした見栄っ張りの江戸っ子たちは、高価な初鰹を手に入れようと競いあったという。江戸後期の文人、大田南畝が書いた記録によれば、文化9年(1812年)に日本橋魚河岸に17本入荷した初鰹のうち6本は将軍家へ、3本は二両一分で料亭の八百善が買い入れ、8本は魚屋にわたり、その内の1本を歌舞伎役者の中村歌右衛門が三両で買い、大部屋の役者に振る舞ったとある。一両でそばが400杯食べられたというから、どれだけ高価だったことがわかるだろう。「まな板に 小判一枚 初鰹」(宝井其角)、「女房を 質に入れても 初鰹」という川柳からも当時の熱狂ぶりが想像できる。

季節を先取りするのも良いが、実は旬の盛りの方が断然おいしいし栄養も豊富、何よりも値段が安い。江戸っ子のように粋ではなくとも、出回ってきた旬の食材を食べることで季節の移り変わりを感じ、豊かな気持ちになることができる。

いまは初鰹、あさりやアジ、ホタルイカがおいしい。野菜では、アスパラや豆類が旬を迎え、夏野菜も出始めている。食卓に旬のモノを取り入れ季節を味わってみては?